NIST の量子暗号に関する提案とは?

2018/11/03 ーーー The US National Institute of Standards and Technology (NIST) は、ポストQC暗号化の世界に関する提言に取り組んでいます。2016年12月に NIST は提案を正式に求めはじめ、2017年11月30日を提出期限としました。NIST の目的は、2023年〜2025年を目処に。量子暗号の標準化に関するドラフトを発行することです。そのタイミングは、量子コンピュータ関する開発と商業化について、業界の定説となっている 15年間の真ん中あたりになります。 NIST は、量子物理学者たちを採用しています。また、NIST のシステムを利用する組織や企業は、量子コンピュータの構築/導入という領域で、何十年もの時間を費やすことになります。そのため、NIST は、量子暗号の標準案を策定するまでの期間のために、暗号安全対策に関する簡潔なドラフトを発表しています。 … More

中国と欧州をつなぐ量子通信実験の詳細とは?

2018/10/23 ーーー 中国の都市間を結ぶ実験から、中国と欧州をつなぐ大陸間での実験へと、量子通信衛星 Micius の応用範囲は拡大していきます。2017年9月に中国は、オーストリアの研究者たちのチームと協力し、量子暗号をベースとした大陸間ビデオ・カンファレンスを成功させました。それは、いわゆる西側に属する国による、中国量子テクノロジーへのリスペクトを示すものです。 この実験を契機に、欧米のメディアによる報道が再開され、また、2018年には中国サイドからの情報提供も盛んに行われるようになりました。以下に紹介する Wired 2018年1月の記事は、Chinese Academy of Sciences (CAS) から提供された情報と、オーストリアの科学者たちから提供された情報をベースに、Wired が執筆/掲載したものであり、実験の様子が克明に描かれています。 ーーーーー いつもの電話会議のように見えた。テーブルにはパネリストたちが並び、白くて大きな名前タグと飲水が置かれていた。蛍光灯で照らされた中央の男が、カメラに向かって言った。 昨年9月のことだが、Chinese Academy of Sciences … More

中国が実現した量子衛星通信と新たな暗号化システム

2018/10/19 ーーー おそらく中国以外の国々も、衛星を介した量子通信にチャレンジしているはずです。しかし、2016年に打ち上げられた Micius という衛星により、中国は一足先に大きな成果を上げています。「スプートニク・ショック」という表現を、各メディアが用いたように、当時のソ連に有人宇宙飛行で遅れを取って以来の衝撃が、米国を揺るがしました。 実際に運用されたアプリケーションはビデオ・カンファレンスですが、衛星通信を介した量子の絡み合い (エンタングルメント) が用いられ、ハッキングが不可能な暗号経路が構築されています。ビデオ・カンファレンスで用いられる映像や音声のデータは、ファイバを介して送受信されているはずです。ただし、共通暗号鍵は衛星を介して配信され、この衛星回線がハッキングされる瞬間に、その試みは露呈するため、次の共通暗号鍵に切り替えられてしまうという構造になっているようです。 EU では European Space Agency (ESA) が、共通暗号鍵自身の生成を衛星上で行い、暗号鍵へのアクセスを物理的に排除するという試みを推進しています。この ESA には (中国の Micius プロジェクトに協力する) オーストリアの研究者たちも参加しているので、中国との関係がちょっと気になります。 … More

量子アクセラレータとエコシステム

2018/10/17 ーーー 第三回目は、Challenge #3: Assembling and programing qubits as a QC accelerator です。この章では、何が解決すれば、一般的なプログラマが量子アクセラレータを活用し、次世代サービス/アプリケーションを書けるようになるのか、という視点が語られています。 前回で解説したように、まず、量子物理学者に解決してもらうものとして、補正のための量子ビットを正確に動かしてもらうという事柄が挙げられています。ただし、この点に関しては、単なる工学的課題であるという意見もあります。 2016年に NIST が、ポスト量子のための暗号スタンダード策定に取り掛かりましたが、その背景には、量子誤り訂正符号と閾値定理の開発が、順調に進んでいるという認識があるのでしょう。 こうした、量子コンピュータを正確に機能させるための努力の上に、本題である量子アルゴリズムが構築され、それらを利用する開発エコシステムが生まれていくわけです。そう考えると、かなり長い道のりが残されているように思えます。 ーーーーー 現時点の最大の関心事は、シングル・ファンクショナル論理 … More

不安定な量子を正確に機能させるために

2018/10/15 ーーー 第二回目は、Challenge #2: Getting a stable result from a QC program です。この章は、安定した量子の操作が、いまの技術では難しいことを説明しています。量子を安定させるためには、絶対ゼロ度の環境が必要であり、それを達成するための試みが、いくつかの研究機関や民間企業で進められています。 しかし、1つの量子だけで1ビットを表現することは、依然として達成されておらず、対象となる量子を補正するための、多数の量子を絡め合わせることで、いまの量子コンピュータは動いているようです。20 Qubits や 50 Qubits という言葉を耳にしますが、それらは並列に並べることが可能な量子ビット幅のことであり、これまでのコンピュータにおけるビット数に似たものと言えます。 ただし、量子の場合は、このような … More

量子コンピュータは API を介して活用される

2018/10/11 ーーー 今日からは、3回に分けて、Quantum Computing Will Not Break Your Encryption, Yet という記事を参照しながら、量子コンピューティングの現状と将来について考えていきたいと思います。この記事は、2017年10月に Forbes に Paul Teich さんが寄稿したものであり、量子コンピューティング全体をカバーする良記事となっています。タイトルを見ると、暗号化に絞り込んで解説されているように思えますが、そのような内容ではありません。 第一回目は、Challenge #1: ProgrammingQuantum Computing です。量子コンピューティングのプログラミングと言うと、量子物理学の理解を前提とした、量子アルゴリズムの構築が必然となります。しかし、それはきわめて難解なものであり、すべてのアプリケーション開発に当てはめてしまうと、エコシステムの構築が危うくなるという側面を持ちます。 以下の記事では、量子アルゴリズムの構築は量子物理学者に任せ、それらを … More

はじめに:量子コンピューティング/コミュニケーションの現状

2018/10/09 ーーー Alibaba/Google/IBM/Tencentや、学術/国家研究機関(中国、欧州委員会、ロシア、米国を含む)などが、現実世界の問題を解決するために、量子コンピュータ (QC) アーキテクチャの研究開発を進めています。また、2017年には、Microsoft も量子コンピュータについて発表し、それに続いて Intel も、量子アーキテクチャのチップ化について発表しました。 量子コンピューティングとは、個々の原子核粒子を計算要素として使用するという、量子物理学の実用的な応用形態のことです。そして量子コンピュータには、既存のコンピュータとは比較にならないほどの計算速度で、複雑な問題を解決していくというメリットがあると言われています。また、量子の絡み合い (エンタングルメント) を用いて、ハッキングが不可能な通信を確立することも可能です。 量子コンピューティングの世界には、コンピューティング、コミュニケーション、シミュレーション、センシングという、4つの分野があると言われています。しかし、それらを実現するためには数多くの課題が残されています。よく言われるのが、量子を安定させるために必要な温度という課題です。 ケルビンの絶対温度以下という、宇宙空間よりも低温にするために使用される冷蔵庫は、$500,000 以上の費用がかかると言われます。コストもさることながら、そのサイズも気になります。いずれにしても、私たちがに日常で用いる PC や スマフォに収まるまでには、それが実現するにしても、かなりの年月がかかることでしょう。 もう一つの大きな問題は、量子コンピューティングのためのアルゴリズムが、きわめて難解なものになるという点です。しかし、既存の GPU (graphics … More