不安定な量子を正確に機能させるために

2018/10/15 ーーー 第二回目は、Challenge #2: Getting a stable result from a QC program です。この章は、安定した量子の操作が、いまの技術では難しいことを説明しています。量子を安定させるためには、絶対ゼロ度の環境が必要であり、それを達成するための試みが、いくつかの研究機関や民間企業で進められています。

しかし、1つの量子だけで1ビットを表現することは、依然として達成されておらず、対象となる量子を補正するための、多数の量子を絡め合わせることで、いまの量子コンピュータは動いているようです。20 Qubits や 50 Qubits という言葉を耳にしますが、それらは並列に並べることが可能な量子ビット幅のことであり、これまでのコンピュータにおけるビット数に似たものと言えます。

ただし、量子の場合は、このような Qubits を実現するために、大量の補正量子を用いることになります。したがって、シンプルにしたいけど複雑になってしまうというディレンマが、いまの量子コンピューティングにはつきまとっているのです。

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量子コンピュータにおける重要な課題の1つとして、プログラムが開始されたときに、すべての Qubits が正常に動作していることが挙げられる。もちろん、Qubits のプログラムが終了するまで、Qubits が正確に動作することを、確認することも同様である。

しかし、言うはやすしである。

まず最初に、量子計算が終了するまでの間、Qubits を適切な状況に固定するためには、ほぼ「絶対ゼロ度」で凍らせる必要がある。絶対ゼロ度 (0°Kelvin / -459.67°Fahrenheit / -273.15°Celsius) は、熱や動きを完全に押さえ込んだ、理想的な状態を提供する。しかし、私たちの宇宙では、熱力学の基本法則のために達成が不可能である。そこで Qubits を、0.01°K / -459.65°F / -273.14°C にすることで、絶対ゼロ度に近づけていく。それは、深宇宙空間よりもずっと寒く、実現するためには膨大なコストを必要とする。

The IBM Q quantum computer chassis is a deep sub-Kelvin freezer

このような低温であっても、プログラムを終了するまでの長い時間に渡って、Qubits を正しく動作させることは非常に難しい。そのため、量子コンピュータ・アーキテクチャにおいては、それぞれの Qubits に対して。エラー検出/訂正を施す必要がある。 誤りに対する検出と訂正を伴う Qubits は、フォールト・トレラントやロジカルといった概念と互換性があるものとされる。

なんらかの Qubit をダイレクトに観察することで、プログラムを終了できる。 量子コンピュータ・アーキテクチャでは、計算の対象となる Qubit と、その他の Qubits を絡ませる必要がある。したがって、 量子コンピュータ・プログラムでは、計算の対象となる Qubit の状態をダイレクトに観測しなくても(つまり計算を停止することなく)、計算の対象となる Qubit の状態を推論できる。そして、エラーが観測された場合には、誤った Qubit の状態を補正し、量子計算を完了することが可能となる。

現在のテクノロジーでは、1つの論理 Qubit を作成するために、数多くのエクストラ物理 Qubits を用いている。その量はアーキテクチャーに依存し、10個〜数千個のエクストラ物理 Qubits が必要とされる。対象となる Qubit 自体の構造がフォールト・トレラントであれば、シングル物理 Qubit が可能となる。Microsoft が主張しているのは、トポロジカル Qubits と呼ばれるマテリアル・ベースのフォールト・トレラント Qubit の設計において、画期的なテクノロジーを開発したという点である。Microsoft のトポロジカル Qubit は、一対の Majorana Fermion 粒子をベースにした、シングル物理 Qubit だけを取り込むものであるが、この画期的なテクノロジーは、他の研究所では確認されていない。

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量子コンピューティングのことを調べ始めたとき、最も分かりにくかったのが、この Logical Qubit の概念でした。文献によっては、Single Atom という表現もあり、それらが同一のものなのかどうか、まだ確証できない状況です。おそらく、正確に機能する1つの量子という意味では同じであり、その意味ではトポロジカル Qubit は画期的な存在なのでしょう。

量子コンピューティングで実現する社会という記事で及川卓也さんが、「普通のコンピューターにおけるゼロイチのビットで考える時であれば、0を反転させると1ですよ、というようなことができますよね。しかし、量子の場合はそのような単純な計算をしても、状態の重ね合わせなので、0の逆が1の可能性は 98.X% あるというような結果しか出てきません。それは、フォールト・トレランス(エラー耐性)というのがある程度きちんとできた時に、高速化した古典的なコンピューターとして扱っていいのか、それともそういった振る舞いをある程度意識した形で、我々はプログラムを書くようになるのか、どちらなのでしょうか?」と、不安定な量子の核心をついたコメントを発しています。

したがって、IBM/Google/Microsoft といったベンダーでは、Quantum Computing Will Not Break Your Encryption, Yet で解説されているように、論理 Qubit を正確に機能させるための研究開発が続けられているのです。その一方で、量子アニーリング方式を用いるカナダの D-Wave などは、最適化問題 (だけ) を解くための実用的な量子コンピュータとして、すでに実用の段階に入っています。つまり、量子コンピュータには二つの方式があるのです。なお、前述の記事は7部作の一部であり、全体を読むためには、こちらのリンクが便利です。量子コミュニケーションについて語られていないところが、ちょっと残念ですが、ぜひ通読をオススメしたいです。